包装の到達点に迫れるか ECサイトの食品表示でガイドブック策定
ECサイトで販売されている食品の賞味期限情報や産地情報、保存方法とは?消費者がスーパーなどで購入する商品ならば、これらの情報は食品表示法で容器包装上での起債が義務付けられているが、ECサイトでの掲載は法律適用の対象外。これによって浮上しつつある混乱やトラブルを回避すべく、消費者庁では食品を取り扱うECサイト運営事業者に向けたガイドブックを作成し、普及啓発を進めている。
2020年4月1日に完全施工された食品表示法では、小売店での販売時、生鮮食品ならば容器包装などの見やすい箇所に原産地や栽培方法などを、また加工食品ならば包装の裏面やラベルに原材料名や添加物、保存方法、販売者など、さらに栄養成分表示の記載が義務付けられている。
その一方で、近年はインターネットを介した電子商取引(EC)サイトでの購買が急増しており、中でも食料の購買は新型コロナウイルスの感染拡大で大きく増加中だとされる。ただし食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)の適用範囲は「食品の容器包装上」であり、ECサイトの掲載は対象外となっている。つまり、ECサイト内で食品表示情報の提供に関するルールは、定められていないのが実情だ。
このため現在、国際的な食品規格を定めるコーデックスでは、ECサイトにおける食品情報の提供に関する議論が行われており、これら情報の提供実態を把握・分析したうえで、同サイトでの食品表示の提供の在り方について検討中だという。
ユニバーサルコミュニケーションデザイン協会(UCDA、在間稔允理事長)が8月に都内で開催したセミナー「パッケージとECサイト 生活者を守るコミュニケーションデザイン」では、消費者庁から食品表示規格化の松原晃指導係長が「インターネット販売における食品表示の情報提供に関するガイドブックについて」と題して講演。ECサイトでの食品購入に伴う問題点について、前述のような背景と経緯に触れた上で、どんな情報の提供が困難か、またECサイトで食品を購入する際に分かりにくい情報は何かなどについて解説した。
加えて、消費者が求めている食品表示情報と事業者が実際に提供できる食品情報のギャップについて行った調査結果、さらに国内外のECサイトにおける食品表示の実態調査結果などを踏まえた事業者向けガイドブックの概要も紹介している。これについては、姉妹誌「月刊食品包装」11月号以降でも詳細な記事掲載を予定。
包装上での食品表示は、限られたスペース上に多くの必要事項を掲載する都合上、食品産業と包装産業の双方が綿密に協力し合い、最適な形を模索する必要があった。しかしECサイトでは基本的にスペースのサイズを気にする必要がなく、いくらでも情報を載せられるメリットがある。ただし、そうなると情報が多すぎて逆に分かりにくくなる懸念も持たれている。
食品産業がパッケージやラベルの上での苦労の末にたどり着けた食品表示の理想形にECサイトがどこまで迫れるか、注目したい。
包装タイムス2022年10月10日引用