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リスクの分散が重要に コロナ禍で可能性も再認識

 

包装タイムス1月1日・4日号引用

2020年の国内段ボール(シート)生産量は前年を下回る状況が続き、通年では141憶平方メートル(前年比96.6%)程度になる見通しだ。新型コロナウイルスの感染拡大、特に4月の緊急事態宣言による外出自粛が大きく響き、その後に回復したもののおおむねGDPと相関した動きを辿った。
しかし、個別に見ると業績を維持・漸増させた企業もあり、その多くでは一つの事業や特定の得意先(業種)に偏らないリスク分散が図られていた。不透明な時代だからこそ、この重要性は増している。

今年の国内経済は、コロナ禍の急激な落ち込みの反動はあるが、回復ペースは穏やかなものになる見込み。
民間調査機関による実質GDP成長率予測の平均はプラス3%強となっている。
こうした経済見通しなどを考慮し、全国段ボール工業組合連合会は、21年(暦年)の段ボール需要を前年比101.4%の143憶平方メートルと予測している。これは19年の生産量(143憶1800平方メートル)にわずかに届かない。

機関別の内訳は、1~3月が99.0%、4~9月が102,5、10~12月が101.5%。
主な重要部門別では、構成比の4割を占める「加工食品用」が2%程度、「青果物用」が1%程度、「電気器具・機器器具用」が2%程度、それぞれ伸長するとしている。

「薬品・洗剤・化粧品」は、新しい生活様式の定着で薬品・洗剤需要がある一方、インバウンド需要の回復が期待できないこともあり前年並みと予測。
eコマース市場の成長を受けて「通販・宅配・引越用」は順調だが、一部で脱段ボールの動きも見られ、2%程度の伸びに鈍化するという。

国際市場に目を転じると、いち早くコロナ禍から経済回復している中国、その生産基地としての役割を果たす東南アジア地域での段ボールは旺盛で、中長期的にも力強く成長するだろう。

某紙が「東南アジアの段ボール市場は”楽園”」と報じたように、国内の製紙一貫メーカーの参入も目立つ。
他方、中国では政府が環境保護を目的に、原料である古紙の輸入を制限した。
このため、日本の段ボール原紙の輸出が大幅に増加しており、原紙メーカーが増産工事を行っているとはいえ、需給バランスの乱れも懸念される。

ここ数年、中小段ボールメーカーに対するM&A、大手のグループ化が進んでいる。さまざまな理由が考えられるが、後継者不足や設備投資の負担増といった事情も大きい。
市場の品質要求に応えられない企業は退場を余儀なくされるが、新型機械はサーボ駆動が中心で、導入費用は年々高くなっている。

値段だけでは海外製の機械が安いが、1日も止められない現場事情から普及していない。
機械メーカー各社は、生産性と最高品質を求めた開発を進めつつ、費用負担を抑えた機種も提案する。

例えば、梅谷製作所は下取りした自社製機械を新品同様にオーバーホールし、保証を付けたリニューアル機を販売しており、他の低コスト路線も模索中だという。また、新幸機械は親会社の中国製機械を自社製と同じメンテナンス体制で販売した。

コロナ禍の昨年、人々の不安を解消するものとして、各社は段ボール製のパーテーションほか感染症対策品を開発して話題を呼んだ。
段ボールという素材の加工性、サンプルカット機などの普及に伴う設計力、素早い対応力といった可能性を再認識させられた。
業績向上に直結するものではないが、こうした商品開発で得られた発想や技術、販路は今後に生かせるだろう。

人手不足や生産性向上についても、引き続き業界の課題である。
いわゆるA式ケースの生産効率は高いが、付加価値の高い製品では手作業に頼る部分が多く残っており、この分野の自動化・省力化が進んでいる。
新技術では、生産機として使える水性デジタル印刷機(プレプリント輪転機、シート印刷枚葉機)が国内工場に導入され、新たな市場の形成も注目される。

 

<ひとこと>

一つの事業や特定の得意先(業種)に偏らないリスク分散は、不透明な時代だからこそ重要性は増していると考えます。
段ボール市場は海外への原紙輸出の増加、後継者不足、設備投資の負担等の課題はあるものの
人手不足や生産性向上へ尽力できるよう新しい提案を行っていく必要があります。

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