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特集記事

【2022年業界展望】世界的な社会課題の解決に向けて

新型コロナウイルスの感染拡大は、われわれの日常生活に対する意識や価値観、行動様式を大きく変えた。
同時に健康、貧困、経済、教育、労働、環境などあらゆる側面の課題を浮き彫りにし、従来の常識や習慣に対する一からの見直しをわれわれに迫っている。
こうした変化は当然、パッケージの在り方にも影響を及ぼしている。
素材の選定やデザインなど製造プロセスの取り組みはもちろん、廃棄後のリサイクルまでバリューチェーン全体を俯瞰した総合的な判断が求められている。
SDGsの達成やカーボンニュートラルの実現といった世界共通の社会課題の解決に向け、各ステークホルダーが一緒に考え、協働して解決策を見いだし、そして新たな価値を生むという共創の大きな枠組みが今必要なのだ。

外装資材・機器

~「環境配慮」の視点カギに~
外装分野における永遠の課題である生産性向上やコスト削減。
これに近年は「持続可能性」の視点が加わる傾向がある。
素材や利用方法などアプローチはさまざまだが、”環境に配慮した”ラインナップは確実に増えてきている。
これまではコスト重視で、比較的価格が高くなる環境配慮型の製品への問い合わせは少なかったようだが、今後は企業イメージ向上策として選択肢に加わると見られる。
昨年は、半導体・機械需要の伸びに伴い、好調な売上を記録した企業も少なくなかった外装分野。
この傾向は今年も続くと見られ、輸送包装をはじめとした実用的な機能・性能が求められるのは勿論、環境負荷低減等の価値提供が成長のカギとなりそうだ。

軟包装

~環境対応か、値上げ対応か~
2022年の業界を展望すると安定供給を維持しながらも、環境と値上げへの対応が求められそうだ。
環境対応では、「モノマテリアル」への取り組みが有料候補に挙げられる。
次いで「バイオマス」「生分解」となりそうだ。
モノマテ包材への関心は高く開発、供給はますます加速しそうだ。
そのほかの対応としては、薄肉化やプラ使用量を減らす方向で落ち着くと推測される。
原材料や副資材の高騰による値上げへの対応はフィルムメーカー、コンバーターにとっては見逃せない。
食品軟包装資材を含めパッケージは、社会に必要なインフラであり、安定供給を図るうえでも価格改定を避けられない。

容器・シート

~変化続く市場は次のステージへ~
巣ごもり需要こそ一段落したものの、消費動向には変化が続いている。
ただし全体を俯瞰すれば、容器業界、とりわけ食品容器の市況にはおおむねプラスに働いているようだ。
スーパーは惣菜を中心に好調が継続。
テイクアウト文化の定着や、新たなビジネスの登場など、人々の食生活は次のステージに移行している。
容器にも、より付加価値の高い商品づくりに貢献する機能・デザインが求められており、こうした動きを捉えるべく、今年は活発な開発競争が見られそうだ。
だが、経営環境は依然として予断を許さない状況だ。
原油価格の乱高下という目下の課題はさることながら、いよいよ高まるSDGsへの意識にも適切な”答え”を準備し、社会へ力強く発信していく必要がある。

包装機・関連機器

~工場現場の省力化投資は底堅く展開~
主要ユーザーとなる食品関連企業を軸に工場現場の自動化・省力化ニーズはコロナ禍においても健在だ。
企業の設備投資意欲は長期化するコロナ禍で二極化の動きも否定できないが、工場現場では3密対策や人手不足対応等が喫緊の課題となる中で、それを補う省力化やIT化投資は業種と問わず堅調な動きがうかがえる。
人手不足への対応など工場現場の生産性向上が一段と求められる今日、包装ラインの自動化をサポートするシステム需要は2022年も底堅い展開が予想される。
一方で長期化するコロナ禍において社会・経済活動は一進一退の状況が続く。
ここにきて半導体をはじめ部品不足が顕在化するなど新たな懸念材料も浮上しており、一連の動向や各社の対応が注視されるところ。

物流

~進む全体最適化と構造革命~
前年と比べ、物流関連需要は軒並み回復基調にある。
さらにEC事業者の増加で倉庫建設は、ラッシュが続く。
しかし、コロナ禍での特需といった面もあり、貨物輸送量は人口減少に伴い、総量の減少が予想されることから、このまま安泰とは言い切れまい。
それでも昨年は「総合物流施策大綱(2021~25年度)」で、三つの柱「簡素で滑らかな物流の実現」「担い手にやさしい物流の実現」「強くてしなやかな物流の実現」として物流DXや標準化推進、サプライチェーン全体の最適化や構造改革などの方策が示され、各社これに向けて動き出している。
今回のコロナ禍で国内物流は止まることなく進化を続けてきた。
競争だけでなく協業によって活性化している物流業界の今後のさらなる発展が楽しみだ。

シール・ラベル印刷

~ラベルの価格交渉、本格化!?~
原料価格高騰は、シール・ラベル業界にも大打撃を与えている。
原紙や粘着剤、インキなどの価格が軒並み上昇。
「価格改定」の通告を受け、窮状を訴える声が後を絶たない。
寡占状態にある同業界の場合、大手企業の調整で市場価格が変動する。
だが今のところ大手印刷コンバーターによる「価格改定」の動きは見えてこず、一部の新版のみ新価格に切り替わる様子だ。
「このまま続けば、企業存続の危機を招きかねない」と声を上げるコンバーターも多く、価格転嫁に向けた交渉が広がりを見せている。
このほか環境保全への対応として、昨年も引き続き”脱ラベル”の動きが加速した。
その代表的な例が「POPラベル」やカップ麺の「蓋留めシール」だ。
ただ消費者のなかには、不便さを指摘する声も多く、改めてシール・ラベルの機能面が注目されている。

紙器・段ボール

~「紙化」を追い風にできるか~
海洋プラスチック問題への対応策の一つとして、紙素材への転換が注目されている。
紙器・段ボール業界や紙パルプ業界でも「紙でできることは紙で」の方針を鮮明に打ち出し始め、素材から製品まで技術開発が活発になっている。
従来、包装市場において、紙とプラスチックは競合品として捉えらることが多かったが、最近は双方のプレーヤーが連携して、技術開発や課題解決に取り組む事例が見られる。
素材の優位性だけで市場の変化をチャンスにつなげられるわけではない。
技術力により差別化を図るか、連携により新価値創造を目指すか。
「紙化」に対する市場の期待は、取り組み次第で企業間格差拡大の要因になる可能性も小さくない。

 

2022年1月1日包装タイムス引用